博物館や美術館に展示されている「日本刀」は、どれも美しく輝いています。良い状態で鑑賞するためには、正しく取り扱い、丁寧に手入れをすることが必要です。日本刀を持つときの注意点や保管のポイントについて紹介します。正しい扱い方を学びましょう。
日本刀は、扱い方を間違えると、けがをしたり破損したりする危険があります。ルールを守り慎重に取り扱うことが大切です。
鎺元
どんなにきれいに洗っても、皮脂は分泌されますし、汗をかくこともあります。唾と同様に錆の原因になるため、茎(なかご)以外の刀身を素手で触るのは禁止です。もしも触れてしまった場合は、すぐに手入れをしましょう。
また、打ってそれほど時間がたっていない刀の場合、特に錆びやすいので、茎も素手で触らないようにします。
保管の前の手入れはとにかく丁寧に行いましょう。特に重要なのが、刀身が錆びないために塗る油。薄く、ムラなく塗りましょう。ただし、塗る量が多すぎると油が流れて、鞘などを傷めてしまいます。また、手入れ道具は刀身に直接触れる物ですので、清潔にしておくことが大切。ほこりやごみが付いた状態で手入れをすると、かえって傷付けてしまう恐れがあります。
日本刀の保管に適した場所は、湿度の低いところ。押し入れの中などは湿度が高くなりやすいので、避けたほうが良いです。桐でできた着物箪笥などに横にして入れておくのが理想的です。
日本刀をより安全に保管するために、桐箱に入れておくという方法もあります。刀の種類によって脇差(わきざし)用、短刀(たんとう)用などがあり、手持ちの刀に合わせて特注で作ってもらうことも可能です。
また、桐箱には紐が付いている物があります。紐にはいくつか種類があり結び方も様々ですが、ここでは平紐(真田紐)の結び方をご紹介。正しく結ぶことができれば、持ち運ぶ際に安全であるだけでなく見た目もきれいです。
桐箱の結び方
日本刀にとって、錆びは最大の敵。湿気や手で触ること以外にも、錆びの原因となることがあります。錆びさせず、美しい状態を保つための注意点をまとめました。
保管の際、丁寧に手入れをしたからといって、いつまでも錆びないという保証はありません。古い研ぎの刀は半年に1度、新しい刀はひと月に1度程度手入れをしましょう。定期的に手入れをすれば、状態の変化にいち早く気付くことができます。
「鞘当り」(さやあたり)といって、刀身が鞘に接触していると、油が乾かないように手入れをしても錆びてしまうことがあります。これではどれほど手入れをしても錆びが出てしまうので、鞘師(さやし)に相談して直して貰いましょう。
また、古い鞘は内部に錆や汚れなどが残っていることがあります。これも錆びの原因になるので、新しい鞘に入れ替えなければなりません。
保管をする際、防虫剤(しょうのうなど)の使用は止めましょう。揮発ガスによって錆びてしまう恐れがあります。
寒い季節、温かい部屋で刀を扱うと、気温差で結露が発生することがあります。結露をそのままにすると錆の原因となることも。そのため、まず寒いところから暖かいところに移動した場合は、刀をすぐに抜かず、刀と室温が同じになるまで待ちます。それでも結露が発生したときには、よく手入れをしてから鞘にしまいましょう。
鑑賞中や庭先などで素振りをしているとき、うっかり虫を切ってしまうことがあるかもしれません。そのときは、紙などで拭う前にお湯で洗い流します。
万が一錆びてしまったら、すぐ研師(とぎし)に相談して下さい。自力でどうにかしようと錆びを削ってしまうと、かえって研ぎの手間がかかるばかりか余計に傷付けてしまうことになります。