日本刀は、漫画や映画が好きな人であれば、誰もが一度は憧れる武器です。その理由は、「一目見ただけでも切れ味の良さを思わせる姿」や「素早い動きで標的を一刀両断することができる」などが連想されるため。実際に、アニメやゲーム、映画などに登場する際は、作中で「最強の武器」に設定されることもあることから、「日本刀は格好良いから好き」と言う人も少なくありません。そして、それらのフィクション作品を鑑賞する以外にも日本刀の楽しみ方は様々。現実で楽しむことができる「刀の楽しみ方」をご紹介します。
チャンバラ
男の子であれば、誰もが一度はやったことがある遊びと言えば「チャンバラ」です。チャンバラは、道端に落ちている木の枝や、市販のおもちゃの剣で斬り合う遊びのことですが、人によっては高校生や大人になっても、ついやってしまうほど人気のある刀の楽しみ方のひとつ。
「子ども達がなりたい職業」のランキングで上位を獲得する「YouTuber」(ユーチューバー)は、子ども向けのおもちゃを紹介したり、昔から存在する遊戯にオリジナルのルールを付けて遊んだりしていますが、なかには全力でチャンバラを披露するYouTuberも存在。チャンバラは、子どもから大人まで幅広い世代が楽しめる遊戯と言えます。
フィクション作品などから日本刀を好きになった人は、実在する日本刀にも興味を持つことが多いです。そして、そういった人たちが日本刀への知識を深めるために行うのが、美術館や博物館など、日本刀を展示する施設へ足を運んで、かつて武器として実際に使用された日本刀を鑑賞すること。
日本刀を目当てにそういった施設を見て回るうちに、他の美術品の良さにも気付いて、美術館や博物館巡りが趣味になる人も多く、SNSやブログなどのインターネットサービスを通じて、訪れた施設の情報を発信する人も少なくありません。また、同じ趣味を持つ人同士で「オフ会」(インターネット上で知り合った人と実際に会うこと)を実施し、親睦を深め、最終的に自分たちでイベントを主催する人もいます。
コスプレ
漫画や映画が好きなファンのなかには、作中に登場するキャラクターになりきる「コスプレ」が好きな人も多いです。コスプレを楽しむ人のことを「コスプレイヤー」と言い、コスプレイヤーは自分が演じるキャラクターをより原作のキャラクターに近づけるために、小道具などを自作することがよくあります。
近年では、「コスプレサミット」をはじめとしたコスプレイベントが各地で行われるようになった関係から、コスプレイヤーは年々増加傾向にあると言われており、またそういったコスプレ需要に応えるため、コスプレ用の小道具を売るお店も増えてきました。
一方で、インターネットの普及に伴い、以前よりも小道具の作り方などを比較的簡単に調べることができるようになったため、原作作品へのリスペクト(尊敬)の意味を込めて小道具を自作するコスプレイヤーも多く存在。刀も例外ではなく、自作しようと思うとそれなりの工夫が必要になる小道具ではありますが、細部まで作り込めば、市販の模造刀と変わらないほどのクオリティに仕上げることができます。
日本刀は、鑑賞する以外の楽しみ方ができる美術品です。様々な展示施設を回るうちに、実際に刀を扱ってみたいという意欲が出ることがあり、そうした人は剣術や居合術などの道場へ通うことがあります。
江戸時代から続く伝統的な剣術道場は、現代でも全国各地に存在。幅広い年代の人たちが日夜稽古を積んでいます。剣術などで使用される刀は、実際に物を切ることができる「真剣」です。藁を断ち切る楽しさや緊張感は、実際にやってみなければ分かりません。
施設などで刀剣を鑑賞するうちに、次第に「自分の愛刀を持ちたい」と思うようになる刀剣ファンも多いです。
日本刀は、持ち歩くと「銃砲刀剣類所持等取締法」に違反する恐れがありますが、購入したり、家に飾ったりする場合は、特別な資格はいりません。日本刀を購入する場合は、日本各地にある「刀剣商」へ訪れるのが一般的です。刀剣商とは、刀の売買を行うお店のこと。刀をはじめて購入する場合、刀に詳しい店主やスタッフが丁寧に説明してくれることが多いため、刀を買いたいと思った際は刀剣商へ訪れると間違いありません。
日本刀に興味を持つようになり、博物館などへ訪れる頻度が高くなってくると、次第に「ただ刀身を眺める」だけでは物足りなくなってくることがあります。そして、その感覚こそが日本刀を楽しむ上で重要な感覚と言えるのです。
展示されている日本刀をより楽しむ場合に大事なのは、その日本刀が「いつ」、「どこで」、「誰によって作刀されたか」を知ること。美術館や博物館などでは、展示されている刀に紹介文が書かれていることが多いですが、紹介文をよく見ると「作刀された時代」や「切られている銘」、「文化財指定を受けているかどうか」などの情報はあっても、その刀が「どこで」、「誰によって作刀されたのか」という詳細な情報は明記されていないことがあります。
しかし、少ない紹介文でも「この刀は、いつ、どの流派が作刀した刀だな」と特定することができる愛好家も多く存在。愛好家は、日本刀の長さや反り、刀の表面に表れる「刃文」(はもん)などの見た目(姿)の特徴を観ることで、作刀された場所や年代、作刀者やその流派を特定することができるのです。
日本刀関連の書籍やサイトは、昨今の刀剣ブームによって増加傾向にあります。そうした書籍やサイトでは、刀のことを詳しく知らない初心者でも理解しやすいように説明されていることも多いですが、一方で日本刀は難解な専門用語がたびたび登場する美術品であるため、はじめはその専門用語を覚えるだけでも大変です。しかし、一度用語や特徴を覚えれば、より興味を持って日本刀を鑑賞することができるようになります。
日本刀を最大限に楽しみたい場合におすすめなのは、時代や作刀者ごとの特徴を学び、様々な展示施設へ訪れて、名刀を多く鑑賞し、自分がどのような「刀推し」なのかを知ることです。「刀推し」とは、刀剣ファンの間で使用されている言葉のこと。刀には、様々な形状があるため、人によって「細身の刀身が好き」や「反りは浅い方が好き」、「鋒(切先)[きっさき]は小さい方が好き」など、見た目や特徴の好みが分かれます。特定の流派や刀工が作刀する形状の刀が好き(刀推し)であれば、その刀が展示してある施設や企画展を巡ることができる他、同じ「刀推し」の人と知り合って、どのような点が良いかを語り合うこともできるのです。