日本刀と現代

日本美術刀剣保存協会とは
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日本刀を好きになったら、まず知っておきたいのが、「公益財団法人 日本美術刀剣保存協会」(にほんびじゅつとうけんほぞんきょうかい)、略して「日刀保」(にっとうほ)と呼ばれている団体です。東京都に日本刀専門の博物館「刀剣博物館」(とうけんはくぶつかん)、島根県に「日刀保たたら」という付属施設を持ち、刀剣の広報誌「刀剣美術」を発行。「刀剣の鑑定」や「鑑賞会」、「現代刀職展」という日本刀コンクールの主催まで行っているのです。今回は、日本美術刀剣保存協会について、詳しくご紹介します。

日本美術刀剣保存協会とは

日本美術刀剣保存協会記章

日本美術刀剣保存協会記章

日本美術刀剣保存協会」とは、美術工芸品として価値がある刀剣類の保存や日本刀文化の普及などを目的として、1948年(昭和23年)に本間順治(別名:本間薫山)氏、佐藤貫一(別名:佐藤寒山)氏を中心に設立された公益財団法人です。

同年に「刀剣等の認定制度」(現在は鑑定制度)を開始し、1949年(昭和24年)より、広報誌「刀剣美術」を発行。1968年(昭和43年)には「刀剣博物館」を東京都渋谷区代々木に開館し、1976年(昭和51年)には「日刀保たたら」を開設しました。なお、刀剣博物館は、2017年(平成29年)に渋谷区代々木から東京都墨田区横綱に移転オープンしています。

日本美術刀剣保存協会は会員制で、「文化財としての日本刀の保存・普及等」という日本美術刀剣保存協会の趣旨に賛同されるのであれば、誰でも入会することができます。ただし、入会金1,000円と年会費が別途必要です。会員には個人会員と支部会員があり、支部会員になると支部の活動に参加できます。会員特典は、月刊広報誌「刀剣美術」の配布、刀剣博物館の入館料割引、鑑定審査料金の割引、鑑賞会の参加料割引の主に4つです。

なお、刀剣博物館への入館、刀剣の鑑定鑑賞会の参加は、会員にならなくても、非会員料金を支払えば、利用可能となっています。

刀剣美術とは

「刀剣美術」とは、日本美術刀剣保存協会が発行する広報誌で、日本美術刀剣保存協会への入会特典として月1回配布されています。名刀の観賞解説や実寸の押形が付いているなど、読み応えも抜群。こちらは、日本美術刀剣保存協会に入会しなければ読むことができないため、貴重です。

刀剣博物館とは

刀剣博物館外観

刀剣博物館外観

日本美術刀剣保存協会の付属施設として誕生したのが、「刀剣博物館」です。2017年(平成29年)に、現在の東京都墨田区横綱に移転。旧安田庭園内の両国公会堂跡地に、建築家「槇文彦」(まきふみひこ)氏設計で新設されました。

外壁はステンレスとコンクリート打ち放しで、とてもクール。しかし、なかに入ると、円形の柱や間接照明が目立ち、温かみのある雰囲気です。

まるで、皮鉄(かわがね:硬い鉄)と心鉄(しんがね:やわらかい鉄)を組み合わせて作り込んだ日本刀のように美しい博物館。

刀剣博物館内観

刀剣博物館内観

注目の所蔵刀は、国宝が「太刀 銘 延吉」、「太刀 銘 国行(来)」、「太刀 銘 国行(当麻)」の3点と重要文化財「太刀 銘 信房作」、重要美術品「太刀 銘 真景」(古伯耆)など豊富。

館蔵品展のほか、「鉄の源流 たたら製鉄と日本刀展」など、年間7件ほどの展覧会が開催されています。

刀剣博物館のイベント

鑑賞会

刀剣博物館では、月に1度、本部定例鑑賞会が開催されています。

実物の刀剣を手に持って鑑賞したり、(なかご)を隠して、刀工を当てる「入札鑑定」をしたり、学芸員による鑑賞刀の解説が聞けたりと充実の内容です。事前予約制で、会費は、会員2,000円、非会員3,000円、学生1,000円となっています。

刀剣美術館の施設情報

施設名 刀剣美術館
所在地 〒130-0015
東京都墨田区横網1-12-9
電話番号 03-6284-1000
交通アクセス 「両国駅」下車 徒歩4分
営業時間 9時30分~17時(入館は16時30分まで)
休館日 月曜日 毎週月曜日※祝日の場合開館、翌火曜日休館、展示替期間、年末年始
駐車場 有り
入場料 会員 大人700円
非会員 大人 1,000円(700円)
学生(高校・大学・専門学校)500円
中学生以下無料
※()内は20名以上の団体料金です。
公式サイト https://www.touken.or.jp/museum/

刀剣の鑑定制度とは

刀剣の鑑定区分

刀剣の鑑定区分

日本美術刀剣保存協会では、刀剣等の鑑定も行っています。刀剣の鑑定は、日本国のほか、いくつかの団体により行われていますが、日本美術刀剣保存協会は、作刀年代による区分など審査方法が開示されていて明確なため、いちばん信頼性が高いと言われています。

1982年(昭和57年)に、開設当初よりあった刀剣の認定制度を改定し、現在は鑑定制度として「特別重要刀剣」、「重要刀剣」、「特別保存刀剣」、「保存刀剣」の4段階にランクを設定。審査は、特別重要刀剣は年に2回、重要刀剣は年に1回、特別保存刀剣・保存刀剣は年に8回と頻度が異なるため、鑑定審査を受けたい方は、必ずホームページの「鑑定審査」スケジュールで確認しましょう。鑑定審査には審査料金が掛かり、日本美術刀剣保存協会の会員、非会員、審査結果で価格が異なります。

なお、かつては「貴重刀剣」、「特別貴重刀剣」、「甲種特別貴重刀剣」の審査認定書を発行していましたが、1982年(昭和57年)5月に廃止されました。これらの認定書が付いた刀剣をお持ちの場合は、効力がないため、新しい鑑定を受け直した方がいいでしょう。

「日刀保たたら」とは

日刀保たたらとは、日本美術刀剣保存協会が運営する「たたら」のこと。

たたらとは、日本刀の原材料となる、純度の高い鉄「玉鋼」(たまはがね)を生産する日本古来の重要な製鉄法です。

日本美術刀剣保存協会では、戦前からあった島根県の「靖国たたら」を譲り受け、1976年(昭和51年)に日刀保たたらとして復活。たたら技術の保存と後継者を養成するため、たたら操業が行われ、現在も生産された玉鋼は年に1回、全国の刀匠に頒布されています。

また、日本美術刀剣保存協会では、現代作家の技術の向上を図ると共に、刀剣への関心を高めるため、1955年(昭和30年)から「現代刀職展」というコンクールを開催。優れた作品には、「高松宮記念賞」、「正宗賞」、「特賞」、「優秀賞」、「努力賞」が授与・表彰されています。

日本美術刀剣保存協会とは

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日本刀の切り傷がある場所

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